平成29年6月30日
薬学・薬剤師・薬学生に関係・関心をお持ちの皆様へ
-薬剤師宣言の配信―
公社)日本薬剤学会「医療ZDと完全分業」フォーカスグループ
拝啓:
昨今の国会での国際関連の法案の審議に注目しますとき、多くの場合、国際情勢を真摯に受留め、国際ハーモナイゼーションへ向けた対処がなされていることが理解されます。しかるに、日本が、先進国の中で唯一の「医師の調剤」容認国であることに関しては、国民の生命と健康の保全に密接に関係する重大事であるにも拘わらず、無関心であるように思えてなりません。その理由の一つは、“任意分業”という用語を用い、また処方箋の交付率を“分業率”と呼ぶなど、「医師の調剤」を容認する“不分業”の事実を、あたかも眞の“分業”が行われているかの如く思わせる常識が形成されているためと思われます。
人類の叡智の所産である医薬完全分業(医師は調剤しない)は、1240年にシチリア王国のフレデリックII世王の勅命により法律として確立されました。以来その理念は一度も否定されることなく、先進国の医療の根幹を成して来ました。
日本では、明治維新により、1874年に導入されたこの先進国の分業制度は、医制第41条医師タル者ハ自ラ薬ヲ蕎グコトヲ禁ズ 医師ハ処方書ヲ病家ニ付与シ相当ノ診察料ヲ受クベシ、で示されるように、「医師の調剤」を禁ずる完全分業でした。しかし、僅か15年続いただけで、薬剤師不足を理由に1889年に現行の「医師の調剤」容認の制度に移行しました。そして、分業の原点である「医師は処方し薬剤師は調剤する」に復帰することなく、約130年維持されて今日に至っております。
隣の韓国では2000年に「医師の調剤」のない完全分業を達成しております。また、日本の医師の中には、自分の固有の職能である“診察”に専念するため、他人の固有の職能である“調剤”を侵食すことはしない、という信念をお持ちの先生が多い、ことが報じられているので付記致します。
日本の現行の任意分業を真の分業であるかの如く思わせる常識が国内に広まっている以上、「医師は処方し薬剤師は調剤する」(医師は調剤しない)という先進国で当たり前になって真の分業の常識を、医師・薬剤師・政府・国民に、国際通念の常識として根付かせることが極めて重要と考えて、今回の「薬剤師宣言」の公言となりました。どうぞご理解とご協力をお願い申し上げます。
敬具