このページの目次
学会賞
基盤研究による製剤研究開発の新たな指向性の提言
草井 章(第一三共ワクチン)
今回は公募のローテーションから企業所属者への授賞となる。草井 章博士は簡易製剤、エキスパートシステムによる製剤設計およびチューブ式凍結乾燥システム等の新技術、さらに、医薬品製剤の品質保証に関する Process Analytical Technology (PAT) について積極的に取り組み、その成果を公開することにより、製剤研究開発をけん引して来られた。また、日本薬剤学会においては、評議員、理事、副会長、製剤技術伝承講習会委員、製剤技師認定委員会委員を歴任され、本学会の発展に大きく貢献された。以上の理由から、選考委員会において全会一致で選出した。
功績賞
受賞者なし
奨励賞
リポソームを用いた核酸デリバリーシステムに関する研究
浅井知浩(静岡県立大学薬学部)
浅井知浩博士は、核酸や薬物のデリバリーシステムに関する先駆的な研究を展開し、論文の数、質とも、圧倒的な業績をあげられており、これらの研究成果が高く評価され、研究費の外部資金獲得においても顕著なものがみられる。
また、日本薬剤学会においても、毎年会での発表に加え、DDS製剤臨床応用フォーカスグループ・執行メンバーとして活躍されている。将来的にも、顕著な研究業績をあげ、日本薬剤学会で活躍されることが期待される。以上の理由から、選考委員会において全会一致で選出した。
ミトコンドリアを標的とする Drug Delivery System の開発
山田勇磨(北海道大学大学院薬学研究院)
山田勇磨博士は、DDS研究、特に「ミトコンドリアを標的とする薬物送達」にフォーカスした研究を展開し、多くの業績をあげている。筆頭著者の論文数が多く、国際学会での発表に加え、国際的な賞を受賞されており、国内外での活躍が著しい。さらに、薬剤師としての業務にも従事し、日本医師会災害医療チームの一員として被災地の医療支援にも積極的に関わってきた。また、日本薬剤学会年会においての発表も多く、将来的にも薬剤学分野における幅広し活躍が期待される。以上の理由から、選考委員会において全会一致で選出した。
タケル・アヤ・ヒグチ記念栄誉講演賞
Dr. Michel Buchmann (国際薬学連合(FIP))
Michel Buchmann 氏は、1946年生まれで、現在67歳になる人物である。彼は1971年にスイスのローザンヌ大学で薬学修士を取得した後、1977年に同じくローザンヌ大学で薬学博士の学位を取得している。その後、ローザンヌ大学で1977年~1979年に instructor 、1979年~1992年には assistant professor として研究を行っている。
また、1993年からは University of Geneva and St Gallen で Postgraduate certificate 、2002年以降は Pharma Suisse で postgraduate FPH certificate of consultant pharmacist として活動している。
一方、彼は2010年度からFIP会長として薬学・薬剤師業務の発展のために国際的に活躍している。また、長年に亘ってファーマシューティカルケア、薬剤師職能の開発・向上にも貢献してきた。その功績は数々の受賞歴でも明らかであり、薬学・薬剤師業務のレベルアップのために貢献してきた。
以上の理由から、Michel Buchmann 氏の功績は、日本薬剤学会におけるタケル・アヤ・ヒグチ記念栄誉講演賞の受賞に十分値するものと考え、選考委員会において全会一致で決定したものである。
タケル・アヤ・ヒグチ記念賞
—当期設定なしーーー
旭化成創剤開発技術賞
ジェネリック医薬品の高付加価値製剤の開発・素錠へのレーザー印刷技術の確立とシロスタゾールOD錠の開発
高橋嘉輝、北村雅弘、神田修子(沢井製薬株式会社 製剤技術センター)
ジェネリック医薬品の製剤開発には、先発製剤との生物学的同等性の保証だけでなく、先発品と差別化できる新機能の付与が求められる。錠剤には調剤過誤防止やアドヒアランス向上、トレーサビリティの付与のために、製品識別コードが印字、または刻印される。従来、フィルムコーティング錠には文字を印字した製品が上市されているが、素錠へのインク印字は極めて難しく刻印に限られていた。候補者等は、UVレーザーマーキング装置を用いたOD素錠印刷技術を確立した。本技術のポイントは、酸化チタンを造粒中に添加して錠剤中に均一に分散させる所にあり、UVレーザー光による製品名印字が可能となった。本技術により直接印字したシロスタゾールOD錠を本年6月に上市している。発売後、約90%の医療機関から高い評価を得ている。本研究は、旭化成創剤開発技術賞授賞候補にふさわしいと認める。
旭化成創剤研究奨励賞
非侵襲的な投与方法を可能とする微粒子DDS製剤の開発
田原耕平(岐阜薬科大学 薬物送達学大講座 製剤学研究室)
候補者は、生分解性の高分子微粒子やリポソームの粒子径や表面特性を制御することで、細胞や組織との相互作用を制御できることを示した。更に、注射投与しか全身投与が出来なかった、ペプチドや核酸医薬などの高分子薬物の経口や経肺投与製剤化に成功している。その方法は、微粒子製剤の体内動態を、 Invivo イメージングなどにより解析し、この情報をフィードバックして最適化を計る最も効率的な粒子設計法といえる。更に抗炎症作用を持つ核酸医薬( NFkB デコイオリゴ核酸)を封入した高分子ナノ粒子により、潰瘍性大腸モデルラットの経口投与において、消化管内の薬物の分解を防ぎ、炎症部位に効率的に薬物送達ができることを世界で初めて示した。本研究には更なる発展が期待され、旭化成創剤研究奨励賞授賞候補としてふさわしい。
永井記念国際女性科学者賞
四方田千佳子(医薬品医療機器総合機構)
四方田千佳子博士は、厚生労働省国立医薬品食品衛生研究所で、医薬品製剤の評価方法、医薬品の生物学的同等性試験ガイドライン、経口固形製剤の品質再評価、ジェネリック医薬品の品質確保などの行政研究に携わり、医薬品行政に尽力して来られた。また、同時に日米EUとの医薬品規制調和研究・ガイドライン作成に参加され、国際的にも活発に活動して来られた。日本薬剤学会においては、学会創設当初からの会員として、 regulatory science の発展に大きく貢献され、さらに、評議員として学会運営にも貢献しておられる。行政研究を基盤とした国内外での活動は目を見張るものがあり、今後も、医薬品の品質向上や医薬品承認の国際化に向けて、日本側代表としての活躍が期待される。以上の理由から、選考委員会において全会一致で選出した。
優秀論文賞
—当期設定なし—
創剤特別賞
受賞者なし
国際フェロー称号
Dr. Michel Buchmann(国際薬学連合(FIP))
製剤の達人称号
- 北村 智(アステラス製薬(株))
- 福森義信(神戸学院大学薬学部)
- 並木徳之(静岡県立大学薬学部)
- 中村健太郎(日揮(株))
- 中冨一郎(ナノキャリア(株))
- 松村正純(ジェイバイオロジックス(株))
- 佐藤哲也(大塚製薬(株))
- 寺原孝明(久光製薬(株))