2016年度各賞受賞者一覧

選考未了の各賞は随時アップデート致します

学会賞

多機能性エンベロープ型ナノ構造体の創製とナノ医療への展開
原島秀吉(北海道大学大学院薬学研究院)

原島秀吉博士は、非ウイルスベクター研究の第一人者であり、DDS領域において独創的かつ顕著な研究業績を挙げられている。数百報に及ぶ原著論文の他、多数の総説および本を執筆され、また数多くの特許を取得されており、トランスレーショナルリサーチとしてのDDS研究だけでなく、実用化研究に関しても実践されている。FIPの Distinguished Science Award を受賞される等、国際的評価も極めて高い。本学会では、評議員、理事、年会長、会長とあらゆるポストを歴任され、薬剤学および本学会の発展に対して多大な貢献をされている。

以上の理由から、選考委員会において全会一致で選出した。

功績賞

川嶋嘉明(愛知学院大学薬学部)

川嶋嘉明博士は,本学会を創成期から支えられ、薬剤学の先駆者として活躍されてきた。製剤設計に直結する粉体・粒子設計研究の第一人者であり、300報を超える学術論文の他、多数の総説・解説や教科書も執筆されている。岐阜薬科大学から製剤学分野の優秀な人材を多く輩出され、研究面および教育面の両者において薬剤学の発展に尽力をされている。また、長年にわたり本学会の理事・評議員を務められ、FIPの本学会代表等としても大きく貢献されている。

以上の理由から、選考委員会において全会一致で選出した。

奨励賞

シクロデキストリンを基盤分子とした癌治療DDSに関する研究
本山敬一(熊本大学大学院生命化学研究部)

本山敬一博士は、シクロデキストリン誘導体の抗癌剤キャリアとしての有用性を明らかにし、シクロデキストリンの癌治療への応用に関して優れた研究実績を挙げている。原著論文数および特許取得数が多く、本学会でも数多く発表している。また、海外の学会でも表彰されるなど国内外で高い評価を受けており、今後の活躍が期待される。

以上の理由から、選考委員会において全会一致で選出しました。

ナノテクノロジーで制御するがんアジュバントシステムの創製
中村孝司(北海道大学大学院薬学研究院)

中村孝司博士は、弱毒化ウシ型結核菌の細胞壁骨格成分をナノ粒子に内包化する技術を開発し、新しい膀胱がん免疫療法剤としての実用化を目指す独創的な研究に注力している。インパクトファクターの高い雑誌に多くの論文が掲載されており、本学会でも最優秀発表者賞を複数回受賞するなど、国内外で高い評価を受けている。

以上の理由から、選考委員会において全会一致で選出しました。

タケル・アヤ・ヒグチ記念栄誉講演賞

Patrick Couvreur(The Paris-Sud University)

パトリック・クーバー教授は、ナノ粒子を用いたドラッグデリバリーシステム研究を精力的に展開し、H index が79、総引用回数が24,000回を超えるという数字で評価されるように、非常にインパクトのある研究業績を残してきた。それは基礎研究にとどまらず、ベンチャー企業を創設し、ドキソルビシン封入ポリアクリルシアノアクリレート・ナノ粒子の実用化研究(現在、第3相臨床試験中)や”squal enoylation”技術の臨床応用研究にまで至っている。また、フランス学術会議のメンバーとして活躍し、種々の学術専門会議の委員を務めるなど、研究と教育の発展に大きく貢献している。これらの研究業績や教育への貢献に対して、European Pharmaceutical Scientist Award Sciences 2014など多くの賞を受けている。

以上の理由から、パトリック・クーバー教授の功績は、日本薬剤学会におけるタケル・アヤ・ヒグチ記念栄誉講演賞の受賞に十分値するものと、選考委員会において全会一致で選出した。

なお、Patrick Couvreur博士は、併せて国際フェローの称号と盾を受章した。

タケル・アヤ・ヒグチ記念賞

—当期設定なし—

旭化成創剤開発技術賞

アリピプラゾール長期持続性注射剤の開発
松田貴邦、平岡祥吾(大塚製薬株式会社 製剤研究所)

統合失調症患者の再発予防を目指し、統合失調症薬アリピプラゾールの長期持続性注射剤を開発した。粒子物性(粒子径と結晶形)の設計により行い、1ヶ月1回投与の持続性を達成することができた。更に本製剤は、デポ剤において問題となる局所刺激性もなく安全性にも優れた製剤である。本剤形は、製剤化の全行程を無菌で行う極めて高い技術が必要であり、粒子径の制御には、湿式粉砕、結晶形制御には凍結乾燥法が夫々工業化レベルで開発された。最終製品として、医療現場での簡便性や医療ミスの低減を考慮した新規なデュアルチャンバープレフィルドシリンジ製剤を開発した。本研究は、精巧な粒子設計と高度な製剤機械技術の開発により、医療現場で要求されるニーズに応える製剤開発をしており高く評価される。

旭化成創剤研究奨励賞

マイクロ波を利用した新規口腔内崩壊生薬錠の開発に関する研究
岩尾康範(静岡県立大学 薬学部)

本研究は、高齢者の健康増進のため、安全性が高く、有効成分を多量に含有する生薬粉末の新規口腔内崩壊錠の開発を目的にしたものである。生薬粉末は、高吸湿性で流動性が低いため取り扱いが極めて難しい粉体である。そのため、従来法の口腔内崩壊錠作製技術を生薬粉末に適用することは難しい。そこで、本研究では、薬物、マンニトール、水分保持体を含む混合物を水により造粒した後、低い圧力で湿製錠とし、これにマイクロ波を照射する新規な方法を開発した。本法により、湿性錠内で加熱により水蒸気が発生し錠剤の内部空隙率が上がり水の流路が形成され崩壊が起きやすくなる。また、水蒸気により、水溶性のマンニトール表面が溶解して固体架橋を形成し、高度が増大することが判った。本技術は、生薬含有口腔内崩壊錠の世界初の製法であり汎用性があり将来性も高く評価される。

旭化成研究助成金

個別化医療に有用な刺激応答型DDS製剤の開発
田上辰秋(名古屋市立大学 薬学部)

理想的な薬物治療では、個々の患者の病態に応じて、最適な薬物投与量や、投与法・パターンが決められ、医療の個別化がなされる。本研究では、この個別改良を達成できる刺激応答型DDS製剤の開発を目的としている。本技術の根幹は、超高感度の温度感受性リポソームの開発にあり、PEG系界面活性剤やポリマーを含有するリポソームを加熱すると、リポソーム膜表面にナノサイズの穴の構造体が形成されることを発見した。この現象によって、一度に高濃度の薬物が短時間に放出される。現在知られているもっとも開発の進んだ、温熱感受性リポソーム(ThermoDOX)よりも性能が優れることも明らかにした。さらに、レーザー刺激応答性、酵素応答性といった別の刺激に応答する機能性リポソームの開発も進めている。これら一種の研究のコンセプトの実用化が強く期待され、今回は特別に研究助成金を授与することにした。

永井記念国際女性科学者賞

望月眞弓(慶應義塾大学薬学部)

望月眞弓博士は、医薬品情報学分野の先駆者であり、薬剤学領域や薬学教育において多大な貢献をされている。薬剤学領域における改訂モデルコアカリキュラムの策定に尽力された他、薬剤師向けの本などを数多く執筆された。官学の要職を歴任され、規制や情報関連の多方面で活躍されている他、FIP等を通じて国際的に活躍されている。

以上の理由から、選考委員会において全会一致で選出した。

永井記念国際女性科学者賞特別賞

Carmen Peña López(FIP(International Pharmaceutical Federation))

Carmen Peña López博士は、FIPの長い歴史の中で初めて女性として会長に就任された。このご功績を称えるために特別賞を設定し、日本薬剤学会理事会において全会一致で選出した。なお、Carmen Peña López博士は、併せて国際フェローの称号と盾を受章した。

優秀論文賞

—当期設定なし—

創剤特別賞

受賞者なし

国際フェロー称号

Patrick Couvreur(The Paris-Sud University)

Carmen Peña López(FIP(International Pharmaceutical Federation))

製剤の達人称号

  • 米持悦生(星薬科大学)
  • 青木 茂(エーザイ(株))
  • 福田誠人(武田薬品工業(株))
  • 根岸宗広(テバ製薬(株))
  • 丸山直亮(信越化学工業(株))
  • 山崎忠男(中外製薬(株))
  • 岩佐昌暢(ニプロ(株))
  • 谷本和仁(澁谷工業(株))
  • 田中 孝(千代田化工建設(株))
  • 松原智子(一般財団法人阪大微生物病研究会)